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[9]2つが1つにもどる時(page3)

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2つが1つにもどる時 《もくじ》
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古い映像がそこに映し出される。

でもあの時とはちがう。
ぼくは第三者の視点でそれを見せられていた。


ぼくは案外かわいそうで、でも案外、そんなにかわいそうでもなかった。

あの時ダンテはとても傷ついていたし、
でもダンテのことが許せなかった。


でも今こうしてみると、みんな一生懸命、その瞬間を生きてる。

ぼくはたくさん傷ついたけど、誰がわるいとか、そういうことじゃなかった。




ぼくは、この記憶の中にある、ダンテをゆるそう。


・・・そう思った。


視界がぼやけて、気づくとまた、あの天井の木目がぼくをあざ笑っていた。


「やあこんにちは。」


この日のぼくは、どこか余裕があった。
ぼくは数週間ぶりに、狂乱状態から解放されていた。
そして少しだけ、薄暮の外の光を浴びることが出来た。



・・・しかしそれも束の間、次の日からは苦しみと暗黒の日々が戻っていた。
前の不思議な体験は何だったのだろうと、いやその出来事すら思い出せなくなっていた。
―そんな、時だった。


またあの塔の中に誘われた。
仲間外れにされた時の記憶だ。
みんなは楽しそうにしているのに、いつもいつも
ぼくだけはくるなと言われた。

1度や2度じゃない、何百、何千、何億。

いや、むしろ、生まれてきてから今までのずっとといっても過言じゃない。

なにが気に入らなかったんだろう。

なんで彼らはそんなことをいうんだろう。


でも、今のぼくに、こんな古い記憶は必要なのかな?


来るな!!!!!


すごく感情の奥を抉られるその言葉が、だんだん小さくなって、消えていく・・・。



・・・・くるな・・・。



お前は必要ない、くるな・・・・・。


くるな・・・・・・・。


くるな・・・・・・・・・・・。



お前のいるべき場所は、ここではない・・・・・。


くるな・・・・・・・・・・・。



く・・・・・る・・・・な・・・・・・









・・・・いるべき、場所?

ぼくの、居場所?

ぼくの、在るべき、姿?




あそこは、ぼくの、いるべき場所だったのかな?




ぼくの、いるべき場所は、どこなのかな?



ぼくは、なんのために、うまれてきたのかな・・?




”たすけて・・!”



そのとき、べつの空間から誰かの声がした。



・・・右半分は天使の羽、でも・・・・。

その女の子は半天使だった。


彼女の綺麗な薄桃の衣服には沢山の足形が入っていた。
沢山蹴られたんだ。

ぼくはそっと、彼女に近づいた。


「ぼくと生き直そう、半天使がいじめられない世界がどこかにあるよ。」

ぼくは咄嗟にそう言って、彼女を見つめていた。

「そんなものどこにあるっていうの!!!!」

彼女は顔を豹変させて、鬼のように叫んだ。

あまりの気迫に、ぼくは後ずさりしてしまった、けど・・。

「あるよ、どこかに、なかったら、ぼくたちで作ればいいんだよ。」

彼女は俯いたままぼくの方を一切見なかった。
きゅっと膝を抱えたその両手には、沢山の傷跡が生々しく残っていた。





ぼくと同じように。




・・・・ぼくと、同じ・・。
・・・ぼくの、役割?


半天使としての、ぼくの・・・・・。


使命?




気づくと視界が歪んでまたあの木目と対面していた。

でも今日はそれで終わりではなかった。

意識が虚ろだったぼくの目の前には、見たこともない少女がいたのだ。



ガラスのようなライトブルーの瞳、向日葵色に輝く繊細な金の髪。

無垢な眼差し、木造の小屋の中で、そこだけ違う、異質なにおい。



少女はうっすら微笑んだかと思うとこう呟いた。
「おめでとうございます。天界に戻れますね。」


ぼくはきょとん、とした。

なにを言ってるのか皆目検討もつかない。


ぼくが天界に戻るだなんて、ぼくは魔王になりかけて大勢の天使を・・・・・。


そう言おうと視線を再び上げた時、少女の姿は霧のように消えていた。




それはぼくの願望が見せたただの幻想だったのかもしれない。

なのに、その時からだ。



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