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[9]2つが1つにもどる時(page2)

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2つが1つにもどる時 《もくじ》
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原初の魔王が昇天した。


あの魔王が・・・・・。



あの、あまりに膨大な光のエネルギーが魔界全土を取り囲み、悪魔をたくさん掻っ攫って昇天させた。

あの時と逆の現象だ。

ヴァイオレットは助かった。


彼は原初の魔王の光を元に、闇を自力で自分の中に収め込んだ。

常人に出来るようなことではない。

そんなことをするには、強い、強い意志が必要だ。





―――――その時、神界はお祝いムードでした。

世界は光に包まれていました。

でも、未だ地球は、深い闇にはまり込んだままでした。

闇が最後の抵抗を始めたのです。


そこからは一進一退を繰り返しました。


そろそろ思い出さねばなりません。


あなたが、”なぜ ”うまれてきたのかを・・。








・・・・・ここは、・・・どこだろう?
くらい、くらい、くるしい。

い、いやだァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
殺される、殺される、殺される、殺してやる殺してやる殺してやるコロシテヤルゥゥゥゥッゥウウウウウウ!!!!!!!!!!


こ・・・殺される・・・こわいよ・・・殺されちゃう。
もうぼくをいじめないで・・・殺さないで。

痛いんだ、・・・どうしようもないくらい、心が、体が、すべてが痛いんだ!!!!!!!!!



瞼を開けると、
暗がりの中、木目がこっちを向いてあざ笑っていた。

ぼくはまた、全身を掻き毟って暴れていたのか・・・。


もうこんなこと、終わりにしたいのに・・・。

どうして、どうして、
振り解いても振り解いても、

闇がぼくを執拗に狙ってくる。

どこまでもどこまでもどこまでも、追いかけてくる。


過去を、きおくを、ぼくがぼくであることを!!
ぜんぶ消してしまいたい!!!!!!!!

すべて忘れて、まっさらな自分になりたい!!!!!


自分のしてきた罪を消したい。
自分がされてきた血のこびり付くような暴力と裏切りの数々を消してしまいたい!!!!!

自分を、・・この世から消滅させてやりたい!!!!!




苦しみが収まるまで、今日もヴァイオレットは、殴り続けた、傷つけつづけた。
痛みが、彼の心の叫びを、阻害してくれる。

体を切り刻んでいる限り、心の痛みを、感じなくてすむんだ。

そこら中を殴り続けている限り、ぼくは過去と向き合わなくてすむんだ・・!!!!



だから、正気にもどったとき、どんなに体全身が痛みを訴えようとも、どうしてもやってしまう。

殴って殴って、殴って、殺して殺して殺して・・・。


なんで、ぼく、まだいきてるのかな・・・。




そこに光なんてなかったんだ。

誰も助けてはくれなかった。


味方だと思っていたヒトは本当は味方じゃなくて、
ただの裏切り者だった。

ほんとはきっと、みんなそうだったんだ。

なにか、魂胆があってぼくに近づいた。

そうだよ、だって、そうじゃなきゃ、今までだれも相手になんてしてくれなかったじゃないか。


利用価値が、あった、・・・だから、クズにでも声を掛けたんだ。



・・・ローザ先輩に・・・会いたいな・・・。



記憶が混乱していたヴァイオレットに、少しずつ、
残酷な記憶が蘇ってきていた。



なのに、重要な事実だけが、抜け落ちていた。
ローザが上からの命令によってヴァイオレットに近づいた事実を、
彼は頑なに否定し続けていた。

みんな、裏切り者だ。でも、ローザ先輩だけは、ちがう。

彼の必死の抵抗で、彼の中の事実は捻じ曲げられた。


彼が本気でそう思っていたのか、
或いは、そう思い込むことでもしないと、また魔王になるのではないかと怯えているのか、誰にもわからない。




ヴァイオレットは小屋の中で、来る日も来る日も過去と対峙していた。
狂気と、混乱と、苦しみと、・・・・。
体はいつも悲鳴を上げていた。
生きているのが不思議なくらいだった。
毎日毎日藻掻き続け、そこら中のものを、自分の体を、心を、毎秒毎秒八つ裂きにしていた。
そんなある日、あることが起こった。


ーーーーぼくは、気づくと黒い門の前にいた。
奥にはぼんやりと2つの漆黒の塔が見える。

自分の姿が見えない。
蜷局を巻いてムンクの叫びのような渦たちが黒い門の中を縦横無尽に行き来している。

笑い声のような、でもただの風の音のような、低いそれは、ぼくの耳を惑わした。

笑っているような、泣いているような、喜んでいるような、囁いているような、そのどれにも聞こえる音の数々。


すべての喜怒哀楽が、そこには詰まっていて、
すべての過去が、そこに凝縮されていて、

ぼくはその扉の前に、立っている。


事実は、ほんとうに、事実だったのか。

ぼくが感じたことは、本当に、正しいことだったのか。


変なものがぼくを取り囲んだかと思うと門が開いていて、
ぼくは塔の中に誘われた。



ふるいふるい、それは古い、記憶の数々だった。

もう昔すぎて、とっくに忘れ去られた、その記憶たち。

ぼくはたくさん、傷ついていた。

誰かに否定された。拒絶された。

ちいさな、傷、でも、大きな、原始の記憶。


「お前なんかが、生まれてきたせいで俺は・・・!」




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