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[8]狂想ドデカフォニー(page21)

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狂想ドデカフォニー 《もくじ》
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天使たちは一斉に安定装置に向かって突撃した。
一番兵の少なそうなところを狙って。
士気の弛んでいた兵士たちは、ダンテたちの存在に気づくのも遅かった。
兵に気づかれてもすぐ気絶させることができた。
だが安定装置の周りをぐるっと兵が取り囲んでいるので、近くにいた兵がそれに気づきこっちにやってきて、さらに奥にいた兵も異変に気づきこちらへ。

時間が経てば経つほど状況は明らかに天使たちに不利になってゆく。

だが幸いにも、安定装置の近くにいるせいか、天使たちの力が何倍にも増大していた。

ローザが10人ほどの兵を一気に眠らせ、アルベも同じくらいの数を一気に倒すことが出来た。

あまりの力に、天使たち自身も驚いていた。


ダンテは順調に、安定装置のもとへ歩みを進める。

そして・・・・。


ダンテの右手がそっと安定装置に触れた。

ダンテが安定装置の内部へアクセスする。


「なんだコイツら!?めちゃくちゃ強いぞ!?」
「この生命石があるからだ!くそっ、応援を呼ぶぞ!!」
後方にいたヤンゴン兵たちが逃げるようにどこかへ行ってしまった。
あわててローザとアルベが追いかけようとしたが、距離が離れていて逃亡を阻止することが出来なかった。

「・・・ダンテっ!まだっ!?応援を呼ばれたわ!早くしてっ・・・!」
ローザの叫びに、ダンテは何も答えない。

ダンテは一生懸命安定装置にコネクトしていた。
なぜだかダンテの眉間に皺が寄っている。

「・・・ダンテ?」
ローザがダンテの異変に気づいた。

ヤンゴン兵はろくに戦いもせず逃げてしまったようなので、ローザとアルベは手が空いていた。
2人はダンテのもとへ駆け寄る。

ヴァイオレットは遠くでダンテたちを見ている。

「・・・おかしい、なぜ?なぜ起動しない?応えない?」

ダンテは目を閉じたまま、何度も何度も安定装置にアクセスを試みていた。

アルベとローザも安定装置に触れ、それぞれアクセスを試みる。


だが、安定装置は沈黙したまま動かない。

遠くから兵士たちの足音が聞こえてきた。

「・・・まずいぞ!応援が来た。」
「とりあえず逃げましょ!」
「安定装置が目の前にあるのに・・・っ!?」
アルベは納得がいかなかったが、ダンテとローザがアルベとヴァイオレットを連れて、無理矢理退却した。


そのまま走って、走って、安定装置が見えなくなるくらい遠くまで逃げてきた。


天使たちは喋れないくらい息を切らして座り込んだりしゃがみ込んだりしている。

「・・・・すごい数の足音が聞こえたわ。」
「近くで宴会をやっていたしな。」
「あのまま逃げなきゃいけなかったの!?」
・・アルベだけがまだ納得がいっていないようだった。

ダンテとローザはゆっくりとアルベの方を向いた。
2人とも深刻そうな顔をしている。

「だって安定装置にアクセス出来ないのよ・・・。
いったいどうしてなの?」

「・・・・・・。」
ローザの問いに、ダンテも何も答えられない。

沈黙を破ったのはアルベだった。

「この世界が汚すぎるからだよ・・!
あたしたちも、もともとはすごい光と力を持ってたはずなのに、ここに来て力が出せなくなっちゃったし、いつしか天使だってことも忘れちゃった。

安定装置もきっと、ここにきてほとんどの力を封印されちゃったんだ。」

アルベの力説に、ダンテとローザも圧倒される。
その横で、彼が急に重い口を開いた。

「・・・・・死の臭い。絶望と、虐殺。血と、肉と、腐りきった心。」
ヴァイオレットは何かぶつぶつと言っている。

アルベたちはヴァイオレットの言葉の意味を捉えようと聞き耳を立てる。

「まとわりついた。もう離れない。人が死んだ。天使もしんだ。みんなしんだ。苦しい。楽しんだ。狂って、腐った。悪魔。ぼくも悪魔だった。そうだから。・・・・・。


僕を殺しに来たんだぁあああああああああああああああああああああああアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!」


ヴァイオレットの突然の奇声に天使一同耳を塞ぐ。
ローザが慌ててヴァイオレットに近づこうとするが、ヴァイオレットの魔法で跳ね返された。

「殺してやるコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロスコロスコロスコロスコロスコロス殺す殺す殺すうあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ヴァイオレットの声が地鳴りのように響いた。
その瞬間彼から悪魔の波動が爆発するように飛び出た。


「怖い、このヒト、いかれてる・・」
アルベはあまりの深い闇の波動に震えが止まらない。

「こんなところで・・・だから半天使を連れてくるなど反対だったんだ。
半天使というのは半分は悪魔だということだぞ?
なぜ天界は・・・・」
ダンテは一生懸命魔法を発動させて、周囲への被害を食い止めていた。

ローザも同じく保護魔法を展開し、天使たちを守っている。

それと同時にヴァイオレットに光を送ろうとするが、跳ね返されて届かない。

「ヴァイオレット、お前は悪魔だ!!あの時、塔の上から大人しく死んでいればよかった。そうだろ・・?」
ダンテがヴァイオレットにあらがう為目一杯の魔力をヴァイオレットにぶつける。

「・・・ぼくが死なずに、ダンテが死んだらいいじゃない。」
ヴァイオレットは冷たい無機質な目でダンテに容赦なく攻撃する。
ダンテがむざむざとヴァイオレットの猛攻撃をくらい、血だらけになった。

「・・いつもいつも、殺されるのはぼくだ。
治癒の羽を心臓に当てられて、ぼくがどれだけ苦しんだかわかる?」

ヴァイオレットの攻撃は止まらない。
ダンテがヴァイオレットの攻撃でボコボコにされていく・・。


「・・・ゲホッッガッッッッ・・・!」
ダンテが口から血を吐いてうずくまる。

「もうやめてっ!!」
ローザが駆け寄ってダンテを治癒する。
アルベは自分の攻撃でヴァイオレットの攻撃を相殺する。

「・・・苦しんだ・・だと?俺はお前を助けようと・・・・」

ダンテはその場に這い蹲って、必死に体を起こそうとしている。

「・・・・。まだわからないんですか、ぼくに天の光を当てるということは、もう半分のぼくを処刑台にかけたのと同じなんですよ・・


いつもいつもいつも、浄化と称してぼくを殺し続けて、満足ですか?」

ヴァイオレットの顔が、不気味に歪む。
次の瞬間、凄まじい攻撃がダンテたちを襲う。

ふつうなら天使たちが全滅してもおかしくないような、とてつもない攻撃だった。

・・・だが、安定装置が近くにあるお陰か、ローザのシールドは辛うじて保たれ、そしてダンテの傷も徐々に治っていく・・。

それを見て、ヴァイオレットの表情が鬼のように揺らめいた。
「死ねば良かったのはダンテの方だ!!ダンテが死ねばよかった!!
ダンテさえいなくなれば!!!!ぼくの全てを奪った、お前こそが悪魔だろう!!!!」

囂々と赤い光がヴァイオレットの後ろに集結し始める。

「や・・やばいよ、なんかすごい力が・・・防ぎきれないよ・・・!」
天使たちは死を意識した。

ローザがヴァイオレットに向かって力一杯叫ぶ。

「ねえヴァイオレット!聞いて!ダンテはヴァイオレットのこと、本当は大切に思っているの!
私にとっても大切よ!あなたが気付いていないだけで、本当はたくさん、あなたの味方はいるのよ・・!!」

しかし、その言葉がヴァイオレットをさらに逆上させた。
ヴァイオレットは自分を逆上させた言葉の主・・・ローザへと魔法の矢を放った。

・・・そして。

矢はローザを引き裂いた。







ダンテも、アルベも、為す術が無かった。

悪の力は強大で荒れ狂っていて、とてつもない大きさだった。

「ローザーーっっっっ!!!!!!!!」
ダンテの叫び声が辺りに響き木霊した。

その瞬間・・・。


ヴァイオレットの目が、人の目に戻った。
だが・・・。

ヴァイオレットは目の前の光景を見た。
引き裂かれたローザ。辺りには夥しい血。
アルベは泣いて突っ伏している。
ダンテは必死にローザの名を叫んでいる。

・・・・なんだ・・・これ。

誰が・・・・・・・。



だれがやったの・・・・・・・?


いったいだれが・・・・・。




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